「行かせてください」――小学5年生、アメリカ留学を決意した夜
冬の終わり、リビングでの対話
小学5年生の終わり頃。
息子・ワンダが、人生を変えるかもしれない大きな選択と向き合った夜のことです。
夕食後、リビングのテーブルを片付け、ふたりで向かい合って座りました。
部屋の隅では、我が家の猫・キキとジジが丸くなって、じっとこちらを見ています。
中学受験か、それとも…
私はこれまで続けてきた中学受験の準備について、あらためて息子に聞きました。
「私立中学受験について、今どう思ってる?」
少し考え込んだ後、ワンダははっきり言いました。
「……できない。たぶん僕には合ってない。
日本の私立中学に通う自分が、全然想像できないんだ。」
その言葉を聞いた瞬間、驚きよりも納得が先に来ました。
誰よりも全力で毎日を生きてきた息子は、人と少し違うリズムを持っています。
それを「合わせなきゃ」と思って頑張らせてきたのは、もしかしたら私だったのかもしれません。
息子の“頑張る場所”
それでも母として、こう伝えました。
「中学受験をやめても、いつかは“頑張る時”は来るよ。
それを逃げだって、自分で思わない?」
ワンダはまっすぐ私を見て、首を横に振りました。
「僕、頑張るよ。でも、自分が頑張れる場所で頑張りたい!」
そして出た、ひとつの答え
私はそっと切り出しました。
「もし、“アメリカに留学できる”って言われたら…どう思う?」
数秒間の沈黙。
その時間の中で、彼の心の中で何かが固まっていくのを感じました。
そして――
「……行かせてください。」
小さな声でしたが、はっきりとした決意がありました。
その瞬間、キキとジジがまるでそれを察したかのように、小さく鳴きました。
冬の夜の静けさと、息子の覚悟。
あの空気の重みを、私は今も忘れることができません。
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